Nano Bananaなどの画像生成AIはweb制作の契約関係をどう変更させるか

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Nano Bananaなどの画像生成AIはweb制作の契約関係をどう変更させるか

概要

画像生成AI(Nano Bananaなど)の普及により、Web制作における著作権の取り扱いに新たな法的課題が生じています。本記事では、生成AIで作成した画像は簡易的なプロンプトでは著作物性が認められない可能性があること、その結果、著作権譲渡を前提とした契約に不適合が生じるリスクを解説しています。Web制作に携わるクリエイターや発注企業の法務担当者が読むべき内容で、生成AI使用時の表明保証条項の設定、制作プロセスの記録保管、著作権評価額の事前取り決めなど、契約書に盛り込むべき実務的な対策方法が得られます。

Nano Bananaをはじめとする画像生成AI

テキストを出力するChat GPTなどと並んで、画像や動画生成AIが大きく取り上げられる頻度も高くなってきました。従来から画像生成AIモデルについてはMidjourney 等を区切りに一般に広まってきましたが、Google から8月26日にGemini 2.5 Flash Image Preview(通称Nano Banana )、OpenAIから9月30日に「Sora 2 is here」という動画生成モデルの新型を公表し、SNSやYoutubeなどで多くの反響を呼んでいます。

画像などの生成AIモデルの活用は単に一般人の私生活にとどまらず、事業における画像コンテンツの作成やマーケティングプロモーション動画素材などとしても用いられる機会も出てきており、今後さらに事業的な使い方も着目されるところです。

生成AIモデルが出力するコンテンツに著作物性は認められるか?

クリエイティブモデルによる画像や動画について、著作権などの保護の有無や侵害の成否について多く質問が挙がります。そこで、クリエイティブモデルの登場がクリエイターが締結している契約法関係をどのように変化させるか解説したいと思います。

元々、著作権法は人間の創作活動促進と著作物の公正な利用のバランスを図り、文化発展を促すことを目的として設計されている制度といえます。条文上においては著作権法2条1号にて著作物とは「思想又は感情」を「創作的に表現」したものである必要があるとされています。

生成AIが絵具やカメラなどと異なり議論を呼んでいる原因は、生成AIが従来の道具としての機能にとどまらず、自律的な生成の要素が含まれているためです。

もうすこし平たく表現すると、創作的行為とは、人間の知的創作活動の成果であって、著作者となる人の何らかの個性が表現されている必要があります。筆やカメラの場合はこのような人の個性を発揮する場面が多岐に渡りますが、プロンプトにおいて「いい感じのおしゃれな画像を作って」という指示が、果たして利用者の個性の発露といえるのかと指摘されるわけです

平成29年の知的財産戦略本部による新たな情報財検討委員会報告書においては、生成AIを用いたコンテンツ作成と著作物の関係において、モデル利用者に創作的意図があり、具体的な出力であるAI生成物を得るための創作的寄与があれば著作物性を認め得るが、創作的寄与が認められないような単なる指示(プロンプト)にとどまる場合はAI創作物として著作物性が否定されるという整理を行っています。これは、生成AIで作成した映像や画像が常に著作物性を否定されるわけではないといえますが、他方で、プロンプトにおいて何らかの個性の発露は必要とも考えられます。

個性の発露については東京高裁平成14年10月29日が参考になり、この事例はインターネットの匿名投稿を書籍する際に転載した事案です。裁判所では、著作物性における創作性の判断は緩やかに解釈し、何らかの個性が発揮されていれば足りるとの判断を行っています。つまり、表現物が文化的に優れているかなど、表現物の「質」はあまり問わないといった判断です。この場合、広く著作物における創作性が広く認められ、これに伴って表現者に独占権が当該箇所に認められることになりますが、創作性の程度が低い(個性があまり発揮されていない)表現についてはデッドコピーなどのいわゆる丸パクリの場合に限って侵害として扱うといった方向でバランスが図られようとしています。

この事案から言えることは、著作物として保護されるというためには、画像などの作成作業において、利用者の個性を発揮させるような利用方法が必要であるが、表現物が文化的に優れているような要素は重視されないということになります。

生成AIを用いた場合の契約条項への影響

実際のWeb制作の現場でもヒーローセクションから単調なバナーなどデザインについてグラデーションがあり、セクションの重要性に応じたリソースが割かれます。

そのため企業紹介サイトやLP(ランディングページ)などの制作において、一部画像等について簡略的な生成AIへの指示により出力された画像を使用することも今後実務において増えてくると思われます。

しかしながら他方で、先にみたように、このような画像等については著作物性が否定される見込みが高く、AI創作物として著作権の付着していない画像データという扱いになります。

一般的に、Web制作の契約書において、知的財産、とりわけ著作権に関する権利関係を取り決める条項は非常に重要であり、多くの契約書においては譲渡する著作権の範囲や対価、ライセンス(許諾)の構成をとる場合はライセンスの種類や内容などが取り決められます。

このような契約条項について、生成AIモデルが与える影響を一言でいうと、従来クリエイターが提供するWeb制作のうち、とりわけ画像等の素材は著作権が付着していることが暗に前提とされてきましたが、今後、実は提供コンテンツに著作権が含まれていなかった。という事態が生じることが予測されます。

著作権の譲渡やライセンス条項においては、その譲渡対価を定めていることが通常です。そうすると、本来あるべき著作権がないにもかかわらず、権利があるものとして取引を行っていた場合どうなるのかという法的問題が生じます。

対策としては、大きく次のように分かれます。

  1. 事前の対策として契約書や取引交渉においてどのような取り決めを行うべきか
  2. 制作の委託(履行)のプロセスにおいてどのような管理を行うべきか
  3. 制作物について事後的に著作権が発生していなかった場合にどう取り扱うか

表明保証の活用や画像生成プロセスの記録保管

そこで考えられる方法としては、表明保証という条項の設定です。発注者側の立場からすれば、著作権の対価を何らかの形で算定し、契約書に盛り込むわけですから、クリエイターに対して著作権が発生していることを保証してもらうというのは自然な流れです。

同様の構図は、製造業における供給部品等の特許や実用新案の分野でも生じています。基本取引契約書などにおいて、表明保証条項として、供給物品が第三者の特許等を侵害していないことを保証するよう求める条項などが提案されるなどです。

しかしながら、特許の例でも受注者やクリエイターが非侵害や著作権が発生していることを保証することは容易ではありません。著作権においては、特許と異なり「たまたま一致した場合」などは侵害を認める条件の1つである「依拠性」がないため、クリエイターとしては非侵害の保証に応じる場合もあるかと思います。しかし、著作権が発生していることについては、最終的に裁判所によって判定される事柄でもあるため、容易にそのような条項に合意することは難しく、何らかの修正が落としどころになるでしょう。

落としどころの一例ですが、Web制作の場面においては、生成AIモデルを使用した画像等の素材についてはその旨報告し、併せてその際に利用したプロンプトや試行回数など、出力するに至った情報を共有するといった方法が挙げられます。この場合、クリエイター側の開示情報に営業秘密やいわゆるクリエイターのノウハウが含まれる可能性も否めないため、情報保護のための秘密保持条項とセットになることが予測されます。

また、生成AI用いて加工を行ったが、少なくともオリジナルのデータについては自作であることを保証することなども考えられるところです。

生成AI使用により著作物性が否定された場合の法律関係

最後に、当事者間では著作物が存在する前提で契約が交わされましたが、画像等の素材において、生成AIを使用し、その結果著作物性が否定される場合はどのように契約が扱われるのか考えてみたいと思います。

なぜこれが大きな問題になる可能性があるかというと、生成AI創作物には著作物性が認められないため、第三者がその画像等を使用された場合に、著作権法上の請求が立たなくなるからです。自社オリジナルと思っていた画像がパブリック化してしまう結果、第三者の画像等へのフリーライドや自社ブランドに関する満足感が損なわれてしまうことなどが考えられます。

あると思っていた著作権が存在しないまま、著作権の譲渡等を行った場合は、現行民法においては契約不適合の問題として565条(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)により処理され、履行の追完、代金減額請求、契約の解除などにつながっていきます

契約の解除については、対象画像等の重要性やWeb制作全体との関係などから一部の解除になるか全体の解除が可能かなどの論点にも発展し得るところです。

ここで、代金減額請求の余地を実行させるために、本来契約の段階で著作権の移転がどうしても必要になる箇所の画像等についてはその著作権の評価額や算定方法などのきっかけを設けておくとより安心ということができます。

このように生成AI創作物であるものの、何らかの無形資産としての保護を検討する場合は、商標登録など他の法令も含めた検討を行うべきでしょう。

まとめと対策

本記事の内容をまとめると、画像や動画などのクリエイティブ分野の生成AIモデルの登場に伴い、著作物として認められない画像等が登場するようになり、従来、当然著作権があるものとして扱ってきた取引関係に影響を与える可能性があります。

対策として、事前に生成AIの使用可否や著作権譲渡を伴う場合は対象物の対価、著作権が発生していることの表明保証などを検討し、必要に応じて画像等の作成プロセスを記録化しておくことが有効になります。裁判において、著作権が発生していない場合は、契約不適合の問題として、契約代金の減額や、対象画像等の内容や重要度に応じて解除の範囲などに影響を及ぼすといえます。

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