ChatGPTやTeamsで取引先との会議を録音してもよい?相手の同意は必要?
取引先との会議では、録音を始める前に相手方へ告知し、同意を得た上で利用する運用が適切です。
クラウド型の議事録AIを使う場合は、単に「録音します」と伝えるだけでなく、AIによる文字起こしや要約にも利用することを明示した方がよいでしょう。
もっとも、会議のたびに利用規約やセキュリティ資料を確認してもらうことは現実的ではありません。利用するサービス、契約プラン、社内設定をあらかじめ確認した上で、会議開始時には重要事項だけを短く表示する方法が考えられます。
録音とAIによる文字起こしは情報の流れが異なる
端末のレコーダーで音声を録音する場合と、クラウド型の議事録AIを使う場合とでは、情報の流れが異なります。
議事録AIでは、会議の音声が外部事業者のクラウドへ送信され、文字起こしされたテキストが、要約や論点整理などのAI処理に渡されることがあります。
そのため、参加者にとって重要なのは、録音されるかどうかだけではありません。
- どのサービス、契約プランを利用するのか
- AIによる文字起こしや要約が行われるか
- 何のために利用するか
- どの程度保存されるか
- AI事業者のモデル学習に利用されるか
- 誰が閲覧・共有できるか
これらは、参加者が会議でどこまで情報を話すかを判断する材料になります。
会議開始時には重要事項を短く表示する
すべての取扱条件をポップアップに記載すると、かえって読まれなくなります。
そこで、会議開始時には、例えば次のような表示を行う方法があります。
本会議は、議事録作成のため録音され、AIによる文字起こし・要約が行われます。
利用サービス:Microsoft Teams
利用プラン:Microsoft 365 Business Standard
利用目的:議事録の作成および会議内容の確認
保存期間:90日
AI事業者によるモデル学習:なし
共有範囲:主催者および指定された参加者[同意して参加する]
[録音・AI処理を希望しない]
[情報の取扱いを確認する]
生成AI利用ポリシーやプライバシーポリシーを設けている場合は、詳しい処理内容、削除方法、問い合わせ先などを別ページに記載し、ポップアップから確認できるようにします。
短い表示と詳細なポリシーを分けることで、参加者の確認負担を抑えながら、必要な情報を提供できます。
なお、「AI事業者によるモデル学習」とは、利用企業が会議内容を自社内で検索・分析することではなく、サービス提供事業者が自社モデルの訓練や改善にデータを利用することを指します。
相手方が議事録AIを使う場合にも注意する
自社が議事録AIを使う場合だけでなく、取引先から録音される場合にも注意が必要です。
システム上「録音中」と表示されても、単純な録音なのか、AIによる文字起こし・要約まで行われるのかは分からないことがあります。
処理内容や情報の取扱いが不明な場合は、秘密保持義務の対象となる情報、第三者から預かっている情報、外部AIに送信されたくない独自ノウハウなどを話さないという判断も必要です。
健康情報などの要配慮個人情報や、漏えいした場合に回復が難しい機密情報を扱う会議では、録音やAI処理を断ることも検討すべきでしょう。
海外の動向も意識する
米国では、州によって録音に必要な同意の範囲が異なり、参加者全員の同意を求める州もあります。欧州でも、個人データの利用目的、保存期間、共有先などを明らかにすることが重視されています。
日本でも今後、単なる「録音中」という表示ではなく、利用サービス、契約プラン、AI処理、保存期間、モデル学習の有無、共有範囲などを簡潔に示す運用が標準的になっていく可能性があります。
まとめ
取引先との会議でChatGPTや議事録AIを利用する場合は、録音前に告知し、相手方の同意を得る運用が適切です。
その際は、録音することだけでなく、AIによる文字起こしや要約を行うことも伝えましょう。
会議ごとに詳細な審査を行うのではなく、利用環境を事前に確認し、会議開始時には、利用サービス、契約プラン、利用目的、保存期間、モデル学習の有無、共有範囲などの重要事項を短く表示する方法が、実務上採用しやすいと考えられます。
議事録AIの導入時に確認すべきセキュリティ、NDA、個人情報、社内ルールなどの全体像については、「【議事録AI】DX担当者の導入調査20時間を1記事に。『導入して大丈夫です』と言い切れる完全ガイド」で詳しく解説しています。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。具体的な対応は個別に専門家へご相談ください。執筆:弁護士 原智輝(福岡県弁護士会)/tAiL.法律事務所代表