生成AIを業務で使うのが少し不安です。最低限、何に気をつければ安全に使えますか?
端的に言うと、コツは「いきなり実データで使わない」ことです。生成AIが怖いのは、多くの場合、本物のデータを入れるからです。まずはダミーデータで成果が出るかを確かめ、いけそうなら実データに付いている権利義務を確認してから本番に移す。この2段構えにするだけで、御社が感じているハードルはぐっと下がります。
まずはダミーデータで試す
生成AIで成果が出るかも分からない段階から、機密情報や顧客の個人情報を入力する必要はありません。使いたい業務のデータについて、項目は本物と同じで中身はダミーにしたデータを用意し、それで「どんな成果が出るか」をまず検証してみてください。車をいきなり公道で走らせず、まず試運転するのと同じ発想です。この段階なら、情報漏洩も営業秘密の流出も起こりません。ここで期待どおりの成果が出たら、次のステップに進みます。
成果が出たら「データに付着する権利義務」を確認する
実データに移す前に、そのデータにどんな権利義務が付いているかを洗い出します。生成AIの業務利用で問題になりやすいのは、主に知的財産に関する権利です。具体的には、次の4つを確認してください。
著作権:他人の著作物(文章・画像・コードなど)をそのまま入力したり、生成物に混入させたりしていないか(著作権法)。
営業秘密:自社や他社の秘密情報を入力することで、不正競争防止法上の「秘密管理性」を損なわないか。営業秘密とは、秘密として管理され(秘密管理性)、有用で(有用性)、公然と知られていない(非公知性)情報をいいます(不正競争防止法2条6項)。
守秘義務:NDAや取引先との契約で負っている秘密保持義務に反しないか。
肖像権・パブリシティ権:人物の写真や氏名など、他人の権利を侵害しないか。
洗い出した論点それぞれに、対応を決めていきます。たとえば「その情報は入れない」「加工・匿名化してから入れる」「本人や取引先の同意を取る」「契約で手当てする」といった具合です。やみくもに不安がるのではなく、データごとに論点を特定してつぶしていく——これが、安全に使うための近道です。
まとめ
安全に始める順番は、次の3ステップです。①ダミーデータで成果を検証する(実データはまだ入れない)。②成果が出たら、実データに付着する権利義務(著作権・営業秘密・守秘義務・肖像権/パブリシティ権)を棚卸しする。③論点ごとに対応を決める(入れない/加工/同意取得/契約で手当て)。
生成物の著作権については AIで生成した画像をSNSのアイコンや商用利用しても大丈夫? で、社内ルールの作り方は 会社で生成AIの利用ルールを作りたい。最低限入れるべき項目は? で解説しています。自社の生成AI利用ルールや契約の点検は サービス一覧 からご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。具体的な対応は個別に専門家へご相談ください。出典:不正競争防止法(e-Gov法令検索)。執筆:弁護士 原智輝(福岡県弁護士会)/tAiL.法律事務所代表