Q.

業務で他人の著作物を生成AIに読み込ませて要約・翻訳することは著作権侵害になりますか?【事業版】

関連タグ
著作権法生成AI一般
A.

結論

翻訳して引用する場合は、一定の要件を満たすことで適法に行うことができます。一方、要約して引用する場合は、これを明示的に許容する条文が存在しないため、法律家の間でも議論があり、現時点では一定の法的リスクが残ります。以下では、それぞれの場合に分けて解説します。

翻訳+引用の場合

外国語で書かれた論文や契約書を生成AIで日本語に翻訳し、自社の報告書や成果物に引用するというケースを想定します。この場合、法律上は以下の3つの行為が順に介在しており、それぞれについて著作権との関係を検討する必要があります。

プロンプトへの入力(複製)

著作物をプロンプトに貼り付ける行為は、著作権法上の「複製」(著作権法21条)にあたります。複製は原則として著作権者の許諾が必要ですが、著作権法32条は「公表された著作物は、引用して利用することができる」と定めています。
この引用行為は、その用語の意味として、他人の著作物を自己の著作物等の一部に複製等を行い、自己の著作物等の創作又は作成する行為である行為であるため、不可避的に複製行為を伴い、「利用」とは著作権法上、支分権に該当する行為を指す用語として用いられていることからも、引用目的での複製は32条により許容されると解釈されています。

生成AIによる翻訳行為

著作権法47条の6第2号は、著作権法32条(引用)により著作物を利用できる場合には、翻訳による利用もあわせて行うことができると規定しています。生成AIを介した翻訳行為についても、その結果をユーザーが引用として利用する限りにおいて、同号が適用されると解釈することができます。したがって、引用の要件を満たす限りにおいて、翻訳という手段を用いた利用も適法と解することができます。

翻訳後の著作物の引用・利用

翻訳された文章を自己の文書や報告書の中で引用して使用する行為についても、著作権法32条及び著作権法47条の6第2号の規定により許容されます。

結果として、引用の要件を満たす限り、生成AIを用いた翻訳引用は適法に行うことができます。

翻訳引用における注意点

翻訳引用が適法と認められるためには、以下の要件をすべて満たすことが必要です。要件を欠く場合は著作権侵害となるリスクがありますので、ご注意ください。

引用の要件(著作権法32条)

引用が適法とされるには、次の各点を満たす必要があります。まず、引用する著作物がすでに公表されたものであることが前提です。また、引用部分と自己の文章との間に括弧書きなどによる明瞭な区分があること、自己の文章が主であり引用部分が従であるという主従関係があること、そして報道・批評・研究等の目的に照らして正当な範囲内にとどまっていることが求められます。

出所明示義務(著作権法48条)

引用により著作物を複製する場合には、著作物の出所を、利用の態様に応じて合理的と認められる方法及び程度により明示しなければなりません(48条)。仮に引用の要件を満たしていたとしても、出所明示を怠った場合には50万円以下の罰金の対象となります(122条)。

要約+引用の場合

要約を伴う利用については、法律の構造上、翻訳の場合よりも問題が複雑になります。

著作権法には、翻訳と引用を組み合わせた利用を明示的に許容する47条の6第2号のような規定が、要約については設けられていません。要約という行為は一般に、元の著作物の本質的な特徴が直接感得できる形で新たな表現を生み出す行為として、著作権法27条が規定する「翻案」にあたりうると考えられています。しかし、翻案と引用を組み合わせた利用を明示的に許容する規定は現行法上存在せず、この点については法律家の間でも解釈が分かれています。

この問題に関して、東京地裁平成10年10月30日判決は、学問研究及びその隣接分野における要約引用について、現行法47条の6に相当する旧43条の類推適用により許容されるという判断を示しました。その根拠として、要約引用には一般市民への学術的知識の普及や学術文化の発展を支えるという強い社会的必要性があることが挙げられています。

もっとも、この判決はあくまで学問研究及びその隣接分野という限られた文脈での判断であり、一般的なビジネス実務における要約引用にそのまま及ぶかどうかについては慎重な検討が必要です。

このような状況から、要約引用を明示的に許容する条文は現行法上存在せず、一定の法的リスクが残ります。 実務上リスクを軽減する観点からは、翻訳引用と同様に、主従関係・正当な範囲・出所明示の各要件を可能な限り満たす形で運用することを前提に、要約引用する必要性や業界における慣行の有無などを加味しながら慎重な判断が必要です。

弁護士費用/サービス内容お問合せ

tAiL.法律事務所のサービス内容や料金について無料でお問合せできるフォームです。